ゆっくりとまぶたを開ける。視界に写ったのは、狭い部屋の中に並ぶスチール製の本棚。
思った通りに足が動かない。私の視界は思っているのとは逆の方向に動く。
そのとき、気づいた。これはもしや、夢なのではないか。
ガチャリとドアが開く音がして、反射的に振り向く。そこには、スーツ姿の景虎がいた。
冷たい目でこちらを見る彼に、心臓を掴まれたような気になった。緊張した私は「こんにちは」と声をかける。
景虎は「君か」と返事とも挨拶とも取れない言葉を漏らし、本棚から一冊本を取って、閲覧の椅子に腰かけて表紙を開いた。
そうだ。ここは、会社の図書室だ。今日の昼、マンションの書斎で思いだした記憶の景色と瓜ふたつ。
私の胸は壊れそうなほど高鳴っていた。痛いくらいだ。
しばらく息を整えたら、やっと一歩踏み出して景虎の方に近づいた。
「副社長」
夢の中の私が名前を呼ぶと、景虎が憮然とした表情で、読んでいた本から顔を上げる。
「なんだ。読書中に君が声をかけてくるなんて珍しい」



