「すみません、お願いします」
今日は携帯を見る気になれない。誰かから着信があっても出たくない。
充電器は持っているので、充電だけはしておこう。私は電源が切れたままの携帯に充電器を差し込んだ。
「夜遅くまで語り合いたいところだけど、明日は仕事があるのよね。萌奈ちゃんはどうする?」
「あ……どうしよう……」
景虎も出社しているであろう会社に、行ける気がしない。でも、景虎に会いたくないという理由で休んでいいものだろうか。
今日も自分の都合で早退してしまった。これではますます佐原さんに嫌われる、自立できていない女になってしまう。
「明日の体調で決めます」
「うん、それがいいね」
完全にではないけれど、記憶を取り戻したばかり。朝起きて、めまいや頭痛がするようだったら休もう。そんな状態で無理して行ったって、役に立たないし。
「そういえば萌奈ちゃん、ひとつ聞こうと思ったんだけど」
「はい、なんでしょう」
ソファの上でぴしっと背筋を伸ばすと、原田さんは静かに聞いた。



