よくよく考えて思い出した。新しい携帯にしたとき、景虎に即行消去された連絡先だ。

「あなた、どんな車に乗っているんでしたっけ?」

「は? ああ、何台かあるけど。赤いドイツ車、白いイタリア車……」

 私は確信した。彼はあの「アヤト」だ。アプリのアイコンに、赤いスポーツカーの画像が登録されていた。それを話すと、彼は深く頷いた。

「そうそう、それが俺の連絡先だ。しばらく既読マークがつかなくて、お前のアイコンが新しくなったと思ったらすぐブロックされた」

 やはり、彼は知り合いだったのだ。

「ごめんなさい。ちょっと、手違いで」

 景虎が消去してしまったことは、伏せておこう。話がややこしくなってしまう。

「それで、あの……堺さんは、私とはどういった関係で?」

 おずおずと尋ねると、綾人はぽかんと口を開けた。信じられないものを見る目で、私をまじま
じと覗き込む。

「どういったって……俺とお前は、婚約してたんだよ」

「……え? こんにゃく?」

「こ・ん・や・く! 今時どういうボケだそれは!」