ボーっとソファに沈みこんでいると、コンロの上のケトルが沸騰する音が聞こえた。上田さんは火を止め、茶葉を入れたティーポットにお湯を注ぐ。
「ほらほら。さあどうぞ」
あっという間に目の前のテーブルに、ハーブティーとクッキーが置かれた。
「ありがとう……」
カップを口に近づけると、爽やかなカモミールの香りが鼻孔に届く。吸い込んで息をするだけで、リラックスできそうだ。
温かいカモミールティーをすすり、甘いクッキーをお腹に入れると、不思議と気分が落ち着いてきた。
上田さんは会社でなにがあったかは聞こうとせず、キッチンで夕食の準備をしていた。
「ごちそうさま。とっても美味しかった。ありがとう」
シンクまで空のカップを持っていくと、上田さんはにっこりと微笑んだ。少し残っていた頭痛が、それで綺麗に消えた気がした。



