「プロポーズのやり直しをさせてくれ」

 顔を上げると、彼が真剣な目で私を射抜く。

「萌奈、俺と結婚してくれ。なにもしてくれなくていい。ただ、そばにいてほしい」

 彼の言葉が、耳から伝わって全身に染みわたっていく。それは魂にまで広がり、心を震わせた。

「……はい」

 震える声でなんとかそれだけ返すと、彼は一瞬目を細めた。微笑んだ顔を見たかったけど、それは叶わない。なぜなら彼が急に距離を詰めたから。

 目の前が暗くなり、瞼を閉じる。唇に彼の熱を感じた。彼は柔らかくしっとりと、私の唇を包みこむ。

 私はぎゅっと彼の背中に手を回して抱きついた。するとますます彼のキスは熱と激しさを増していく。不慣れな私はただ、彼の唇に翻弄されていた。