過保護な彼はもしかして、前のように私が街でいきなり声をかけられるのを避けるために、わざわざ貸し切りクルーズを計画した?
なんて、考えすぎかな。単に仕事が早く終わったから思いついただけか。
「そういえば、謎の着信があって」
牛肉を食べ終えた彼が、ナイフとフォークを置いた。私は素早く下げられた食器が置いてあったところに自分の携帯を出す。
「ほら。登録されてない番号なの」
「ふうん……」
景虎の目つきが一瞬で不穏な色に変わったので、私はさっとスマホをバッグにしまった。
「こういうのはかけ直さない方がいいよね。いくら私でもそれはわかるよ」
これが個人の番号か、あるいは詐欺の業者なのかはわからない。ただ履歴を消すのは、番号で検索をかけてからでもいい。
以前にメッセージアプリの連絡先を消去されてしまったことを教訓にしよう。今度は勝手に消されないように注意する。
自分からかけ直す気がないことをアピールすると、景虎は無理やり携帯を出させるようなことはしなかった。ただ少し疑うような目で私を見ていた。



