「鳴宮さまですね。お待ちしておりました」
まだ名乗ってもいない景虎に、受付スタッフがにこりと笑う。
「ねえ、どういうこと?」
「いいからついてこい」
戸惑う私たちを、スタッフが案内する。船着き場には複数の客船が停留していた。
「船、乗るの?」
「ここまで来たらわかるだろ」
そりゃあ、出航カウンターで受付して、ターミナル見学だけってことはないと思うけど。
何も聞かされておらず戸惑う私が行きついた先は、あるクルーザーの前だった。周りの大型客船に比べれば見劣りはするけど、じゅうぶん大きい。
「五百人くらい乗れるかな?」
「おそらくそれくらいだろうな」
いわゆるナイトクルーズに参加するのだろう。私は未経験だけど、大学の同級生が彼氏と行ったという話を聞き、羨ましく思ったものだ。
「足元に気をつけて」
景虎の手を頼りに、船内に乗り込んだ。
「わあ……」
船内は外から見るよりも広く感じられた。まるで高級ホテルのような華やかな内装。木製の装飾的な柱、木や花をモチーフにした柄のカーペット。雰囲気を損なわない程度に明るい照明。



