このまま友達登録をして、電話をかけ直すなりメッセージを送った方がいいのかな。
立ちっぱなしで相手からメッセージが来るのを待ったが、それはなかった。
まあいいか……全然知らない相手だった場合怖いし、どうしても重要な用事があるなら、また連絡をよこしてくるでしょう。
携帯をしまい、歩こうとするとまたバッグごと震えた。
もしや、さっきの名無しさん?
今度こそ素早く携帯をつかんで見ると。
「あら」
画面には、しっかり「景虎」の文字。
跳ね上がった緊張が、するすると滑り落ちていく。
「もしもし」
『もしもし。もう仕事は終わったか?』
庶務課は秘書課と違い、残業はほぼない。
「うん。今会社から出たところ」
『まだタクシーには乗っていないな』
「乗ってないけど……どうしたの?」
こういった電話は初めてだ。もしや、例の図書室に案内してくれる気になった?
『珍しく早く終わったんだ。一緒に帰ろう。連れていきたいところもある』
景虎の声は終業後だからか、明るく聞こえた。やはり誰でも、仕事が早く終わるとウキウキするのかも。
「うん、わかった」
電話を切り、私は駐車場へ向かうことにした。
図書室に行く機会を逃したことより、今から景虎がどこに連れて行ってくれるのかが気になりはじめていた。



