私は今、幸せ?
ぽんと脳裏に浮かんだのは、景虎の顔だった。
私のことを愛してくれている旦那様がいる。
彼は原田さんと同じく、無理に記憶を思い出さなくてもいいと言ってくれる。
もう一度恋をしよう。
責められても仕方のない相手にそう言ってもらえたのは、嬉しかった。
彼は私が感じる不安を、できるだけ軽減しようとしてくれているのだ。
「はい……私、幸せです」
うなずくと、原田さんはふふっと微笑した。見惚れてしまうような綺麗な笑みだった。
「よかった。私が知っている萌奈ちゃんは、いつも悩んでいるみたいだったから」
「そうなんですか?」
そういえば、秘書室に挨拶に行ったとき、彼女は何かを言いかけたような。
たしか、「悩んでいる相手とは……」って。
私は秘書課以外の対人関係で悩んでいた?
「教えてください。私、いったいなにに悩んでいたんですか?」
ずいっと顔を寄せると、つんとおでこを突かれてしまった。



