うちの社員食堂は、だだっ広くてホテルのようにオシャレ、しかも栄養バランスを考えた美味しい料理が食べられると評判。テレビの取材が来たこともある。
今日もいつもの日替わり定食を注文し、選べる小鉢を──小松菜のおひたしとひじきの煮物にしてみた──トレーに乗せ、座る場所を探した。
今日は特別込み合っている。テーブルはグループで座っていることがほとんどで、ぽっかり空いている場所がなかなか見つからない。
メインの豚肉のピカタを乗せたトレーは熱く、早く手を放したくてたまらない。
きょろきょろしていると、不意に声をかけられた。
「萌奈ちゃん、おいでよ」
助かった。ぱあっと笑顔でそちらを振り向くと、原田さんが手を振っていた。
「お邪魔しまあす」
原田さんの横に座ると、今まで顔が見えなかった彼女の向かいに座る人と目が合ってビクッと肩が震えた。
じとっとこちらを睨むのは、私を嫌っている佐原さんだ。ショートヘアに大きめのピアスが映える。



