「聞いてたねぇ〜。
 ま、間接的なのがちょっと(しゃく)だったけど、今ちゃんと()ってくれたからいーや」

 そう言ってぶらりと下ろした私の右手に触れて、彼は自分の手のひらと重ねて繋いだ。

「俺も香月が好き。もうずーっと前から」

「………っ、うん」

 私は彼の上機嫌に観念して、下手な笑みを浮かべた。

 好きだと自覚して、その恋心を家へと持ち帰る間もなく本人へと晒している。

 恥ずかしい事この上ない。

 社会科教室の鍵を閉め、彼と二人で職員室へそれを返しに行く。

「二人で行こ、言ってたカフェ」

 下駄箱で靴を履き替えた時。

 ポソっとそう告げると、漣は嬉しそうに笑った。

「初デートだネ!」

 恥ずかしげもなくそんな台詞を残して。


    ***END***