社会科教室の鍵を開け、先生に頼まれた資料本を漣と並んで片付けた。

 普段より口数の少ない私を(いぶか)しみ、漣は私の顔を覗き込んだ。

「なっ、なに??」

 若干ムッとした表情で可愛げもなく切り返す私に、涼しげな顔で彼は「いんや」と首を振る。

「香月ってもう帰るよネ? この間言ってたカフェなんだけど。帰りに寄ってかない? 今日金曜だし」

「あんたと……、二人で?」

「んー……、別に嫌だったら誰か誘えばいんでない?」

 二人っきりの社会科教室で固まったまま、私は言葉に窮した。

 私を見ながら上機嫌にニコニコ笑う彼を見て、やっぱりと確信を得た。

「さっきの、"全部"見てたんでしょ?」

 私は俯いたまま、自分の頬に手を当てた。

 彼は私の反応が面白いのか「うん?」とすっとぼけて笑っている。

「飯塚くんの告白、断った時。
 私が漣とは付き合ってないけど、好きになってるって言ったこと」

 自覚してすぐに告白を要求された気がして、何プレイだよと自分自身にツッコミを入れる。

「全部、聞いてたんでしょ?」

 漣は嬉しそうに笑ったまま、私の頭をポンポンと撫でた。