「うん。あ、聞きたいことあるんだけど、桃山さんって彼氏いる?」
え?
か、彼氏?
そんなの、いるわけない。
「いないよ。なんで?」
「なんで…って、別に、何もないけど」
何もないなら、そんなこと聞かないでよ。
またトラウマを思い出しちゃうよ。
「はぁ…」
思わず、新藤くんがいる前でため息をついちゃった。
「桃山さん? なんかあった? 俺、なんかした? ごめんな」
何がごめんな、なの?って、笑っちゃいそう。
なんだか、必死な新藤くんが面白い。
不謹慎な私で、申し訳ない。
「ううん、何もないよ。ちょっと昔のことを思い出してたの」
「そうなんだ。何かあったの?」
「え…? どうしてそんなこと、聞くの?」
私にとっては、辛い過去なのに。
「単純に…知りたかったからかな。桃山さんのこと」
なんだか、新藤くんの言葉は、私の胸にストンと落ちて、落ち着きを与えてくれる。
「実はね…」
私は、新藤くんに、全てを話していた。
元カレが浮気していたこと、とか。
「そんなことがあったんだ…。ごめんな、辛かったよな」
「ううん。なぜか新藤くんにはスラーっと話せちゃったの」
そう、今までほとんど誰にも喋ったことなかったのに、新藤くんには、抵抗なく喋れる。
なんでだろうね。
「あ、ここだ。着いたよ」
「えっ、ここ!? 本格的!」
「確かに。そこの、お土産物屋入る?」
新藤くんが指差した、お土産物屋さんはすごく、素敵な店で、私も入りたいと思った。
「うん。お土産、あの店で買う!」
「はは、そっかそっか。じゃ行こう。」

