《樹side》

「あはは、夏樹くん。おもしろーい」

今は、修学旅行の、まわり方を決める時間。

せっかく、授業中、桃山さんと過ごせる貴重な時間なのに、さっきから、夏樹が、桃山さんと喋っている。

頼む、頼むから、夏樹から離れてくれよ…

「し、新藤くん? 大丈夫? 顔色悪いよ」

川上さんが、声を掛けてくれるものの、桃山さんが声を掛けてくれたらなぁと、思うだけだった。

「大丈夫。気にしないで。」

「う、うん。何かあったらすぐ言ってね?」

「あぁ、ありがと。」



「あははははは」

夏樹と喋ってる、桃山さんの声が、胸に突き刺さるだけだった。

嫉妬…だよな。

俺、やっぱり、漣が言うとおり、重症だわ。

「なぁ、喋ってないで決めよう」

なんとしても、夏樹と桃山さんを喋らせたくない俺。

「あー、うん…」

でも、みんなの返事は適当で。

その事実にまたイラついてしまう。

俺、なんでこんなに桃山さんが好きなんだっけ…?