居候同期とフクザツな恋事情




ほろ酔いなのと、松野くんとの急接近の予感に上機嫌になっていた私は、何の疑いも持たずにエントランスの鍵を開けて仲林くんを中に通した。

重たそうなスーツケースをガラガラと引きずって進む仲林くんをエレベーターへと導くと、自分の部屋があるフロアボタンを押してにっこり彼に笑いかける。


「何階?」

「え、っと。6階、かな……?」

「6階ね」

自分の住んでいる階を答えているのに語尾あがりになる仲林くんの言い方に少し違和感を覚えたけれど、あまり深く考えずに6階も押す。

それから特に会話をすることもないまま、エレベーターが5階に着いた。


「じゃぁ、お疲れ様」

ほぼ初めてくらいにこんなふうにまともに喋ったけれど、次にいつ顔を合わすかどうかも不明な仲林くんににこやかに挨拶をして先にエレベーターを降りる。

そのまま上がっていくだろうエレベーターに背を向けて自分の部屋に向かおうとしたとき、後ろからガラガラっとキャスターが勢いよく転がる音がした。