そうだ、松野くんのことでも考えて気を紛らわそう。
仲林くん改め、イオから視線をそらして松野くんの笑った顔を頭に思い浮かべる。
そうしたら、不意にイオが横から顔を覗き込んできた。
「そういえば、在原さんの下の名前って何?」
「わ、私?」
「うん」
イオが私のそばでコテっと首を横に傾けるから、ドキンと心臓が跳ね上がる。
「芽衣だよ。在原 芽衣」
「メェちゃん?」
舌足らずな感じでそう呼んだイオが、確かめるように私の目をジッと見る。
「そんなヤギの鳴き声みたいな感じじゃないから」
「えー、かわいーじゃん」
「何が?」
「ん?メェちゃんの名前」
至近距離でにこりとしたイオが、本日何度目になるかわからない不可抗力スマイルを、私目掛けて投下する。
ひとつずつまともに相手をしていると、私の回復が間に合わない。
「それはどーも」
なるべく素っ気なくそう返すと、ここを早めに退散すべく、持っていたサンドイッチをせっせと食べた。



