嬉しくてすぐに大きく頷きそうになったけれど、ついさっき、用事があるからと絢子の誘いを断ったことを思い出した。
絢子の誘いを断っておいて、あとで松野くんとふたりでランチしたことが知られたら……なんとなく感じが悪い。
それに、鞄の中にある社員証。これを、システム開発部の仲林くんに届けないといけない。
「ありがとう。でも、今日はちょっと用事があって。また今度、一緒にランチできたら嬉しい」
そう断りながら、内心では残念すぎて仕方なかった。
仲林くんが社員証を忘れてなかったら、迷わず松野くんの誘いを受けたのに。
「そっか。じゃぁ、また誘う」
私が断ったのにも関わらず、松野くんが優しく笑いかけてくれた。
しかも、「また誘う」と言ってもらえて舞い上がる。
「ありがとう。楽しみにしてるね」
私は松野くんに手を振ると、食堂に行くという彼と部署の入り口で別れた。
それから、別フロアにあるシステム開発部へと向かう。



