居候同期とフクザツな恋事情




「あ、えーっと。うん。そう、かな?」

羨ましいな、と眺めていたら、仲林くんが言葉を濁らせた。


「そうかな?ってどういう意味?」

私から視線を逸らした仲林くんの目が、あからさまに泳いでいる。

旅行に行くわけじゃないのか。だけど、なんか困ってる……?

数秒考えたのちに、ふとあることに思い当たった。


「あー、もしかして。エントランスの鍵が見当たらなくて困ってるとか?」

大荷物で旅行から帰ってきたときに、私も経験したことがある。

どこを探しても見つからなくてすごく焦るんだけど、あとになって案外何度も探したはずの場所から出てきたりするのだ。

私の問いかけに、仲林くんが躊躇うように頷いた。


「あー、うん。そう。玄関の鍵はあるんだけど、エントランスキーが見当たらなくて……」

「あぁ、それで困ってたんだ。いいよ、私が開けてあげる。ここのマンション、エントランスと玄関でキーが違うから忘れちゃったとき焦るよね。昼間とか夜でも早い時間ならまだ管理人さんに対応してもらえるけど、夜遅いといなくなっちゃうし」