居候同期とフクザツな恋事情




「え、っと。たしか、仲林(なかばやし)くん……だよね?」

やや曖昧ながらもその名前を確かめると、目の前の彼が小さく頷いた。


あぁ、やっぱり。

今までほとんど言葉を交わしたことはないけれど、彼は同じ会社のシステム開発部に所属する同期だった。

仲林くんも同期の中では松野くんに負けず劣らずのイケメンで、所属部署を超えて社内で割と顔が知られている。

海外事業部でも、ひとつ下の後輩がシステム開発部にかっこいい人がいると騒いでいた。

だけどこれまであまり関わりがなかったし、私は完全に松野くん派だったから、彼の下の名前までは覚えていない。


そんな仲林くんは、私が住むこのマンションの住人だ。

私が暮らすこのマンションのいくつかの部屋は、うちの会社が独身社員のための寮として借り上げている。

実家が県外だったり、1時間以上離れた場所にある社員は、入社してから5年以内は会社が寮として借り上げたマンションに限り住宅手当が補償されているのだ。