「じゃぁ、それはあとでID交換しよう」
そう言いながらエントランスの鍵を開けてあげたら、仲林くんが私のことを恨めしげにじとっと睨んできた。
「それより、在原さんが全然帰ってこないから、先に帰ってきた美玲に見つかった。しかも、『別れたのにこんなところで待ち伏せするなんてキモい』って、ストーカー扱いされたし」
エントランスを抜けながら私にそんな愚痴をこぼした仲林くんが、エレベーターに乗り込んだ途端にガックリと肩を落とす。
「1日経ったら何事もなかったみたいに受け入れてもらえるかと思ったけど。やっぱり昨日、ほんとにフラれたっぽい……」
「あぁ。エントランスのキーがなくてうちに入れないことをいいことに、永田さんのこと待ち伏せしてたんだ?」
「ちげーよ!」
冗談のつもりで笑ったら、仲林くんが私を睨んで全力でそう言った。
「いや、でも。永田さんにもう一度会えればワンチャンあるんじゃないかって。そういう下心が全くなかったわけじゃないんでしょ?」
冷静に問いかけたとき、ちょうど5階に到着したエレベーターのドアが開く。



