せっかくいい気分で帰ってきたのに!
昨日に引き続き、気分を打ち壊されたことに若干憤慨していたら、私に気付いた仲林くんと目が合った。
「あ、在原さん!」
げっ!
気付かなかったことにしたくて、彼とエントランスにくるりと背を向ける。
だけど……
「在原さん、在原さん、あーりーはーらー、さーん!」
居候男が、大声で縋るように私の名前を連呼する。
夜にそんな大声で何度も呼ばれたら、有名人になっちゃうじゃないか。
仕方なく観念して振り返ると、仲林くんが私に向かって大きく手を振りながら駆け寄ってきた。
その姿はまるで、ご主人様を見つけた犬が尻尾を振っているみたいだ。随分と、大型犬だけど。
「在原さん、やっと帰ってきた。こんな遅くまで何してたの?残業?」
「そっちこそ、外で何してるの?鍵持ってるんだから、先に入っとけばよかったのに」
「そうしたかったけど、エントランスのキーがなかったから」
仲林くんがそう言って、じとっと私のことを見てくる。



