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部署の飲み会が行われたのは、会社の最寄駅直結のビル内にある居酒屋だった。
今回の飲み会の主催は真希子さんなのもあり、オーダーなどはほとんど彼女に任せておけばよかった。
前回とは違って、さほど気遣いせずにできる状況にのんびりと甘んじていると、トイレから戻ってきた絢子がちょうど空席になっていた私の横に座った。
「今日はいいの?松野くんの近くに行かなくて」
テーブルに頬杖をついた絢子が、私にだけ聞こえるようにこそっと話しかけてくる。
ドキッとして振り向くと、意地悪く目を細めた絢子にニヤリと笑われた。
絢子とはそこそこ仲がいいけど、松野くんが気になっていたことまでは話したことがない。
それなのに、バレていたのか……
「別に、私は松野くんのことはなんとも……」
それに、今日の飲み会では松野くんの隣には座らないって、イオと約束してるのだ。
イオとの指切りを思い出して、テーブルの下で左手で右手の小指をそっと握る。
顔を赤くしてうつむく私を見て、絢子がクスッと小さく笑った。



