「そんな真っ直ぐ見ないでよ。これから同じ部屋に帰るのに。もう一回キスしたいの、我慢できなくなる」

視界を覆うイオの手の熱と余裕なさげな彼の言葉に、胸がぎゅーっと痛くなる。


「いいよ」

イオの手の甲に手をのせると、瞼の上で彼の指がピクリと震えた。


「だって、やっと帰ってきたのに。イオのことちゃんと見たい」

目の上にあてられていた手を退けると、唇をぎゅっと横に一文字にして、何かを堪えるみたいに顔を赤くしているイオと目が合った。


「先に言っとくけど、これはメェちゃんが悪い」

眉根をジリジリと寄せたイオが、切羽詰まったみたいに苦しげな声を出す。

その次の瞬間、ぐっとイオとの距離が詰まって。彼の唇が私のそれに、優しくそっと重なった。