居候同期とフクザツな恋事情




「お願い、在原さん。今日、泊めて」

聞こえてきた仲林くんの言葉が、一瞬空耳かと思った。


「え?今、何か言った?」

「だから、もし彼氏いないなら、今日在原さんちに泊めて欲しくて」

だけどどうやら、聞こえてきた言葉は空耳ではなかったらしい。


「ごめん。ちょっと意味がわからない。仲林くんちって、このマンションの6階なんだよね?」

「…………」

確かめるように尋ねると、仲林くんが無言で視線を横にずらした。


「え?何、その反応。会社の寮扱いで、ここのマンションに住んでるじゃないの?数えるほどだけど、朝にエレベーターが一緒になったこともあったよね?」

「いや、まぁ。そうなんだけど……事情があって帰れなくなっちゃって」

「事情って何?まさか、エントランスキーだけじゃなくて部屋の鍵も見当たらないとか?」

「うん、まぁ。なんというか……」

「そういう事情なら、1日くらいネカフェ行けばいいじゃん。隣駅にあるでしょ」

「うん、まぁ。もしかしたら明日には考えが変わってる可能性もあるけど、1日だけじゃ済まないかもだし……」

モゴモゴと訳のわからないことを言う仲林くんに、少しずつ苛立ちが募る。