「ねぇ、湊。湊はどうしてあんな形であたしの前に現れたんだろう」
「いまだにそれだけは分からないな。でも、こうやって一緒にいられれればそれでよくね?」
「それもそうだね。でも、ひとつだけ謝らないと」
「ん?」
湊が首を傾げる。
「49日とか言ってごめんね」
「あー、確かに言ってたな」
「だって、あたしにしか湊の姿が見えなかったんだもん」
あたしだけにしか見えない湊に、あたしは恋をしたんだ。
「あっ、そうだ!忘れてた!!あー、ヤバい。間に合うかな?ちょっとテレビつけていい?」
「あぁ」
ベッドサイドのテーブルの上にリモコンに手を伸ばす。
今朝、家を出る前に愁人が『今日の夕方、去年の湊先輩たちの試合の再放送テレビでやるよ』って教えてもらっていたんだった。
「なんか見たいのあった?」
「うん。そう。実は湊のね……――」
そう言いかけて、テレビに釘付けになる。
驚きが体中を駆け巡った。
このユニフォーム。このスタジアム。この歓声。この選手。
青いユニフォームを身にまとった選手がアップで映し出される。
『おっと、星城の10番流川湊が抜け出しましたね。一人抜き、二人抜き……流川、シュートーーー!!!!決まった――!!』
シュートを決めた選手のもとに駆け寄って頭を叩くチームメイト達。
その輪の真ん中でひときわ眩しいほどの笑顔を浮かべている選手。
「――湊だったんだ」
あの日、あたしは確かにこの試合を観た。
通りかかった電気屋さんの液晶テレビで。
「ん?」
「ううん、なんでもない。湊、カッコいいね!」
あたしが微笑むと、湊がベッドの隣をポンポンッと叩いた。
「おいで。こっちで一緒に見よう」
「うん」
いそいそと湊の隣に寝転ぶと、湊が後ろからギュッとあたしのことを抱きしめる。
湊の大きな腕に包み込まれたあたしはありったけの気持ちを込めて言った。
「次の試合、頑張って。絶対勝ってね」
「当たり前じゃん」
自信満々な湊がたのもしい。
ベッドの中は二人の体温が溶け合あって温かい。
「好きだよ、湊」
「俺の方が好きだから」
湊の言葉に愛おしさが込み上げ来る。
テレビの中の湊が必死な表情でボールを追い続けている。
大歓声の中、ボールを操る湊はキラキラと輝いている。
あたしは湊にはなれないし、特別でもないかもれない
でも、あたしはあたし。それでいい。
こんな気持ちになれたのも、全部、湊のおかげ。
前を向いて生きて行こう。
湊があたしを抱きしめる腕に力を込めた。
そして、いつかあなたの隣に胸を張って立てるような人間になりたい。
湊の腕に抱きしめられながら、あたしは心の中でそう願った。
主審が試合の終わりを告げる笛を吹いた瞬間、ひと際大きな歓声があがる。
真っ青な空の下、天高くガッツポーズした湊にあたしの胸は痛いぐらいに熱くなった。
【END】



