わたしにしか見えない君に、恋をした。


「流奈?」

「左手じゃなくて、右手だって言った?」

「ん?」

「何だろう。変な感じ。すごく変」

「何が?」

「あたし、覚えてる。ここで何かがあった」

苦し気な表情を浮かべる流奈の頭をポンポンッと叩く。

「今みたいに頭ポンポンもされたことがある」

「……誰に?」

「わかんない。ただ、すごく大切な人に……。その人に……その人に……会いたい……」

今にも泣きだしそうな流奈の頭を撫でる。

流奈には大切な人がいる。それが誰かは俺には分からない。

その人がどこの誰か、流奈とどういう関係かが分かれば俺が流奈に会う理由はない。

流奈の小さな手が小刻みに震えている。

手を伸ばせばその手に、指に、流奈に触れられる。