わたしにしか見えない君に、恋をした。

「流川さん、今日もリハビリ頑張ろうね」

リハビリ室にやってきた俺は理学療法士の山口さんに笑顔で迎え入れられた。

いつもと同じようにマシンに腰かけ、足の曲げ伸ばしを行う。

明らかに昨日よりも今日の方が負荷が軽くなっている。

少しづつ体がもとに戻りつつあることを実感する。

「調子いいね」

「そこそこです」

「もうすぐ退院できるんじゃない?」

「だといいんですけど」

何気ない会話を交わしながらふと視線をリハビリ室の入り口に向けた。

「あっ……」

時が止まったのかと錯覚してしまいそうだった。

意図せずに漏れた声。数メートル先にいたのは愁人の姉ちゃんだった。