「早く。早く。早く」

一分でも一秒でも早く、会いたい。

はやる気持ちが抑えきれない。

「早く湊に会いたい――」

そう呟いた瞬間、キキッーという物凄いブレーキ音があたりに響き渡った。

轟音をとどろかせて前方から黒い塊が物凄い早さでこちらに向かって突っ込んでくる。

「――姉ちゃん!!」

「愁人、危ない――!!」

言葉より先に体が動いた。

とっさに両手で愁人の胸のあたりを押し、突き飛ばしていた。

眩しいヘッドライトに目を細めた瞬間、ものすごい衝撃が全身に走った。

跳ね飛ばされて宙を舞った体は容赦なく地面に叩きつけられた。

全身に走る痛みに思わず顔を歪める。

立ち上がろうとしたものの、体に力が入らない。

「そんな、嘘だろ――。姉ちゃん!!」

愁人の絶叫がぼんやりと鼓膜を震わせる。

会いたいよ、湊。ただ湊に……会いたいだけなのにな……。

こんなのってないよ。あたし、どこまで運が悪いのよ。

意識が遠のいていく。

その瞬間、あたしは確かに生きたいと強く思った。

こんなところで死にたくない。

生きていたい。この世界で。あたしは。
ここで終わりにしたくない。終わりにしたくないよ、湊。

あぁ、ダメだ。瞼が自然と閉じてしまう。

「みな……と……」

瞼に浮かんだのは、湊の笑顔だった。