湊になんて出会わなければよかったんだ。

そうすればこんな悲しみも苦しみも痛みも切なさも知ることなんてなかったんだから。

忘れたらいい。湊の笑顔なんてもう忘れちゃおう。

一緒に過ごした時間も、全部なかったことにしよう。

全部、なかったことに……?

「……そんなのできるわけないじゃん。忘れられるはずもないし」

サッカー場からどうやって家に帰ってきたのかも分からない。

電車の中でもバスの中でもただひたすら泣き続けるわたしに周りの人はギョッとしたような視線を送っていた。

家に帰ってからも涙は止まることはない。

このまま体中の水分が全部出てしまうんじゃないかって心配になるぐらい。

ヒックヒックと勝手に喉が鳴って、息ができない。

グチャグチャな酷い顔。こんな顔湊に見られたら絶対に笑われる。