そして、「ごめん」と言うと、ゆっくりと腰を屈めてあたしの唇にキスをした。

唇と唇が重なり合ったのはほんの一瞬だった。

湊はスーッと音もなく消えていった。

「湊……湊――――!!!おいてかないで……!!あたしを置いていかないで!!」

その場にへなへなと座り込む。

結局、言えなかった。

この気持ちを。湊に伝えることができなかった。

「湊が好き。大好きなの……。だからいかないでよ!ねぇ、湊……お願いだから……ねえってば!!」

何度も名前を呼んでも、湊はあたしの目の前に現れてはくれない。

サッカーグランドからワーッと大きな声援が聞こえる。

残ったのは冷たい唇の感触と、湊を失ったというどうしようもない喪失感と悲しみだけだった。