わたしにしか見えない君に、恋をした。

「まだ、いる」

湊の呼吸を確かに耳元で感じる。

大好きな人に抱きしめられるのってこんなにも幸せなんだ。

これ以上ないほどの幸せに包まれていると、ついつい忘れそうになる。

湊があたしにしか見えないこと。

こんなにハッキリと湊の存在を感じるのに、誰の目にも湊は映っていないなんて。

「湊、あのね、湊は……流川湊っていうんだよ」

「そっか」

「すごいサッカー選手なんだって。みんな湊の名前知ってたよ?」

「うん」

「湊……?」

湊はあたしの体を抱きしめたまま離そうとしない。

最後の別れを告げているかのように、あたしの頭までも包み込むように抱きしめる。

あたしも湊を強く強く抱きしめ返した。

湊が離れないように。消えないように。忘れないように。