「分かった。何か温かいもの買ってくるから。すぐ戻ってくるから」

「――流奈」

慌てて立ち上がろうとしたあたしを湊が呼び止めた。

「なに?」

「ありがとな」

そう言って微笑んだ湊の顔が透けている。もう時間がない。

声に出すことができなかった。

目頭が熱くなっていることに気が付いて必死に頬を持ち上げてぎこちない笑みを浮かべると、湊に背中を向けて駆け出した。

涙がポロリと零れた。

湊は見てないから、セーフだよね?心の中で言い訳をする。

一刻も早く、湊の元へ戻らなくちゃ。

一分でも一秒でも早く、湊の元へ戻りたい。一緒にいたい。

全速力で自動販売機まで走りコーヒーを買うとポンポンッと肩を叩かれた。

「流奈ちゃんじゃん。俺のこと見に来てくれたの?」

「金山先輩……」

こんなタイミングで会うなんてと心の中でため息をつく。

「今日は絶対、流奈ちゃんの為にゴール決めるから」

「先輩は……」

「え?」

どうしてあたしなんかに構うの?先輩ならモテるだろうしいくらだって彼女もつくれるだろう。それなのにどうしてあたしなんかを誘うのか理解できない。

もちろん、他の女子にこうやって声をかけている可能性も否定できない。

でも――。