変われない私を嘆きながら、私は校門から出た。


「あぐりちゃん、久しぶり」


遠い過去に感じる、あの声が聞こえた気がした。

私は顔を上げた。


「先…」


鈴木先輩がいる。

パーカーで、ラフな格好。


わざわざ会いに来た…?


そんなことされたら、期待してしまう。

期待して、また傷付くなんて嫌だ…。

目を伏せて、前に進もうとした。


「…待って?」


ギュウっとスクールバッグを握っていた私の手を掴んで、引き止めてきた。


「これで、会うの最後にするから。最後に、俺のワガママ聞いてほしい。
もう1度だけ、あぐりちゃんと話させて」


私は、聞いてみたいと揺らいでしまった。

最後だって。

ここで逃げたら、今度こそ鈴木先輩とはもう…。


「…高校サボってまで来たんですか」

「入学式、明日だから。それに、定時制高校に進学したんだ。どちらにせよ、授業が始まるのは夕方から」

「そう…なんですか」

「元々全日制に行くつもりだったから、あれだけ頑張って朝行ってた。
けど、入学しても同じじゃ困るなってことで、後期から進路変更したんだ」


定時制高校…か。

私が逃げないことを察したのか、手を離した。


「あぐりちゃん、3年生になって教室戻れてたらいいなって思ってたよ。
でも、もし保健室登校や別室登校を継続するつもりだったら、この時間くらいに帰るかなって、待ち伏せしてた。ごめんね」


先輩の予想通りだ。

何も変わっちゃいないんだから。