「適当に分けろ」

「あ、ありがとうございます。
 美味しそうですね。

 お茶淹れましょうか」

 うん、と言うと、夏菜は喜んでお茶を淹れにいった。

 京都の老舗の上生菓子だったからだろう。

「わあ、綺麗ですねー」

 夏菜は秘書室の隅にある流しで、改めて菓子を見て、喜んでいる。

「このお皿使ってもいいですかねー?」
と小さな食器棚から和菓子用の銘々皿を出して、指月に訊いていた。

「いいだろう。
 せっかく社長が買ってきてくださったんだから」
と指月が流しに行き、一緒にお茶の支度をはじめてしまう。

 しばらく黙って、ふたりで準備するのを見ていたが、ああだこうだ言いながら、菓子を切る黒文字まで探しはじめたので、そのまま社長室に戻った。