好きなんだから仕方ない。

音が怖いわけではないが、続いていると思えばぴたりと止んでまた鳴り始める。どれだけ気を強く持っていても精神的に滅入ってしまいそうだ。

「ここなぁ。兵士の中では“兵士の死に場所”って呼ばれてんだ。敵に追われ、逃げ切れないと感じたら足が付かないようにこの森へ入って自分の口を塞ぐ。一般的にはこの風の音も魔女の呻き声なんて呼ばれているが、兵士の中では亡くなった兵士たちの祝福なんて呼ぶ奴もいる。・・・どういう仕組みになっているんだろうな」

「お気を確かにお持ちください。救われる命があるかもしれないのです」

「あぁ、すまん。分かってはいるんだ」

呪いか何か。そう思える。森に入って四日、ヅヌダクの自分を痛め付ける行為が目立ってきた。最初は拳を握り締めたりたまに首を左右に振ったりするだけだったが、今は足を叩いたり血が出るほど唇や拳に歯や爪を食い込ませている。
お互い、もうそろそろ限界が来るかもしれない。俺も、自分で自分の首を締めてしまいそうだ。