好きなんだから仕方ない。

「クロエラさん・・・?クロエラさん!」

「っ?あ・・・、お久し振りです」

「お久し振りです。・・・今、少し時間宜しいでしょうか」

郵便局の前の通りを歩いている時、最初の試練で最後に立ち寄った宿屋の主人が話しかけてきた。農家でもない主人がなぜこんな所に。
まぁ、宿屋を経営していても街に用事がある事くらいあるだろう。不思議な事ではない。買い物では無さそうだが。
まさか、誰かに手紙か小包を送るため?いや、国内となるとあの町の位置なら直接向かった方が手間も金も少なくて済むだろう。
じゃあ用事って何だ。あの日、エイミア様がいない事に気付いてすぐに俺とヅヌダクとカナケトは城を出て追いかけた。エイミア様の事だから最初の試練でお世話になった人々に挨拶をしてから帰るだろうと考えて馬車を走らせた。馬車を持っていかなかった事を考えるとまだ国内にいるだろうと思って。
ただ、エイミア様はどこを捜してもいなかった。念のために付近の町や村を捜してもダメだった。