今は違うのに王族であった時の考え方が抜けない。今までは王族だからと一歩下がって壁を作ってきた。もう一歩下がる理由はどこにもないのに思いを伝えれないのはなぜだ。嫌われるのが怖いからか。そうやって、女中がしてくれた忠告も無視して他の人を愛してしまっても良いのか。俺はそれで、本当に良いのか。
落ち着け。エイミア様が何の理由も無しに手紙だけを置いて専属だった者に挨拶もせず出ていく訳がない。きっと何か、理由があるはずなんだ。他の二人は知らないが俺やカナケト、ヅヌダクはついていくつもりだった。
国に仕えているのではなく、エイミア様に仕えていたい。だから、エイミア様の故郷に行ってもどうにかして仕事を探そうとしていた。一緒にいられる環境を作ろうとしていた。それは知っていたはず。
俺たちを連れていけなかった理由。舞踏会の騒がしさに紛れなかったらダメだった理由。気持ちだけではない何かがきっと。
エイミア様は襲撃があったあの日も奥様が命令して周りに被害が及ぶ事を恐れた。もし舞踏会中に一緒に向かった事がバレたら俺たちも巻き込まれていたかもしれない。
彼女は俺たちの身の安全を守るために一人で行ったのか?