ここの農家は子供と一緒に遊ぶ。ただそれだけで宿も野菜も確保してくれた。裏があるんじゃないかと一緒に来ていた執事のクロエラは疑っていたけれど全然心配には及ばなかった。寧ろ、ありがとうと笑顔を見せてくれた。皆、本当に良い笑顔で王族だと隠し、旅人だと騙しているのが辛くなるくらい。

「エイミア様、一つお伺いしても宜しいでしょうか」

「何?」

「この試練、勝ち上がれると思いますか」

素直に勝ち上がる気は無いと言えばクロエラはきっと何をバカな事をと説教し始めるのだろう。私の気も知らないでと言えばそれまでだけど、クロエラの気持ちも知らない私には言える資格はない。
勝ち上がりたくないと言えば説教はされないんだろうけど、悲しむ表情を見る事になる。
好きな人には笑っていてほしい。出来るだけ幸せであってほしい。だからって我慢しすぎたら悲しませる事になるんだけどね。