そういえば、今日は満月だったか。通りで明かりがなくても大丈夫なわけだ。
「どうぞ」
「ありがとう。・・・美味しい」
「ありがとうございます」
出来上がったココアを一口飲んで微笑んだと思うと、彼女の目から静かに涙が溢れた。嗚咽を押し殺そうとしているのに出来ていない所が感情の強さを表してくれている。
何粒も溢れる涙を拭いてあげる事が出来たならどんなに良いか。長男であれば何の抵抗もなく、拭いてあげる事が出来たのだろう。俺が王族だったならきっと。
触れたいと思いながら自分の拳を握り締めたのは何度目だろう。いい加減触れても許されないだろうか。彼女に仕えて十三年。私情で触れた事はなかった。恋心を抱いていたというのに頑張っていると思わないか。
せめて今日だけ、彼女の心の支えとして。
「どうぞ」
「ありがとう。・・・美味しい」
「ありがとうございます」
出来上がったココアを一口飲んで微笑んだと思うと、彼女の目から静かに涙が溢れた。嗚咽を押し殺そうとしているのに出来ていない所が感情の強さを表してくれている。
何粒も溢れる涙を拭いてあげる事が出来たならどんなに良いか。長男であれば何の抵抗もなく、拭いてあげる事が出来たのだろう。俺が王族だったならきっと。
触れたいと思いながら自分の拳を握り締めたのは何度目だろう。いい加減触れても許されないだろうか。彼女に仕えて十三年。私情で触れた事はなかった。恋心を抱いていたというのに頑張っていると思わないか。
せめて今日だけ、彼女の心の支えとして。



