何も言わず、俺は二人の間に入った。何も言えなかったんだ。言おうとする度に喉に蓋がかかって止めてくる。なのに、涙は枯れるほどたくさん出て止まらない。
歯を噛んで嗚咽を漏らす事しか出来なかったんだ。こんな状態でも、例え喋れなくても、意識がなくても耳から俺たちの会話は聞こえている。何も出来なかった俺たちが悔やんでいる事を気にしていた彼女が自分のせいで喧嘩していると聞いたらどれだけ死にきれない気持ちになるか。

「様子を見てくる。クロエラ、行くぞ」

「何で、僕を・・・?」

「エイミア様が生きている内はお前が専属の兵士である事実は変わらないからだ。守って言ったんだろ?今の精神状態なら俺たちがそばにいるよりもお前がそばにいた方が生存率は上がる。それだけだ」

暫く時が流れ、日付も変わる頃。この建物が大きく何度も揺れた。魔界は地鳴りはあっても地震なんて起こらない。