好きなんだから仕方ない。

無力な自分に奥歯を噛んだ時だった。兵士たちの騒がしい声と共に大広間の重い扉が開いたのは。そこには彼女が野菜を貰いに回った小さな町や村の人々が堂々と立っていた。

「皆さん・・・!どうして・・・!」

「どうしてって・・・。そりゃあおめぇ、俺たちの野菜がうめぇって王族にお墨付きをもらうためだろうよ!なぁ!」

「エイミア様。あなた様のお心遣い、恩で返しに参りました」

一番最初に立ち寄った村の村長が声を上げると、一緒に来ていた者たちは思い思いにエイミア様への応援や感謝の言葉を述べた。子供たちはエイミア様の許へ駆け寄り、抱き付く子もいた。
予想外の訪問にエイミア様も驚きはしたものの、再会を喜んでおられる。すると、最後に立ち寄った町の宿屋の主人が跪いて小さな箱を差し出してきた。
その中にはエイミア様の誕生日に異国の王子から求婚を申し込まれた時の特別な宝石が入っていた。宿屋の主人は代金代わりに置いていかれたけれど受け取れないと返しにやってきたそうだ。