「素敵なお話ですね」

「ここまでは、です。エイミアの母親は終戦前、王女として国を纏めていました。その名残と言いますか、村長として動き回る事が多かったんです」

それからの話はこうだった。元王女として頼られる事が多かったエイミア様の母親は元兵士だった父親と共に家を空ける事が多かった。そのため、エイミア様の世話は自宅で医者をしている男とその兄、医者の男の親友がしていた。だから温もりも三人の愛しか知らない。
写真を見てエイミア様が複雑な表情をしていたのは母親という存在を想像できなかったから。母親に片手で足りるくらいしか抱いてもらっていない事もあってどういう愛が母の愛なのかよく分かっていない。だから、想像のしようがなくて出てしまった表情らしい。
パルドメールさんはエイミア様が同じくらいの年齢以上の女性と関わるのに苦手意識を持っているのはそのせいじゃないかと考えているそうだ。パルドメールさんの両親も旅行好きだった事もあり、家にエイミア様以外の女性がいる生活に慣れていなかった。
パルドメールさんの憶測が本当なら、城での生活は相当苦痛だった事だろう。