なんて言ったら、世界を股にかけて活躍している、いかにもなキャリアウーマンを想像されるかもしれない。

 しかし私が所属するのは本社の総務部総務課庶務係。
施設や物品の管理や、来客や電話の対応、慶弔関係の手続きに社内行事の運営、その他もろもろ。頼まれたらなんでもやる、いわば社内のなんでも屋だ。

 やっていることは地味かもしれない。しかし庶務係は、本社にいる約300人の社員たちが日々の業務を円滑に行えるよう、縁の下で支える重要な部署だ。

 私はこの仕事にやりがいを感じているし、誇りを持って毎日挑んでいる。


 私、清家(きよいえ)夏美(なつみ)は入社5年目の28歳。

 大学在学中に囲碁のプロ棋士試験に合格することができず、亡くなった祖父から引き継いだ囲碁教室も閉鎖することになって路頭に迷いそうになっていたところを、榊のおじさまに拾われた。いわゆるコネ入社だ。

 社長のコネ、だなんて聞いたらいびられそうなものだが、毎年異動希望者ゼロの庶務係に配属されることがわかると、社員一同、手放しで歓迎してくれた。

 会社的に見ればそろそろ中堅社員に入ろうかという私だが、庶務係の中では最年少。さっきのような力仕事は、私が買って出るようにしている。というのも、若い人が配属を拒むせいで、うちの係にはベテラン社員ばかりが集まっているのだ。先輩方に無理はさせられない。
 
 デスクに戻ると、ちょうど3時のおやつどきだった。