お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~


「俺に作らせてくれたらどくけど、どうする?」

「わかった、わかったから早くどいて」

 ようやく体をどかした拓海は、意地悪な笑みを浮かべている。……拓海ったら、わざとやったな!


「……じゃ、じゃあ先に使わせてもらうね」

「どうぞごゆっくり」

 しどろもどろな私を見て、拓海は余裕の笑み。面白がっているのかもしれないけれど、本当に調子が狂う。

「覗いたりしないから安心して」

「あ、あたりまえでしょ!」

 拓海のくすくす笑いを背中で聞きつつ、私は逃げるようにバスルームへ向かった。


「もうっ、信じらんない拓海のやつ」

 シャワーを浴びながら、一しきり悪態をつく。

 一緒に住むようになってからというもの、拓海はやたらと物理的に距離を詰めてくる。

 学生時代は、そんなことなかったと思う。拓海は一方的に好意を寄せられることも多かったから、相手に勘違いさせたりないよう、むしろ他人との距離に関しては慎重だったはず。


 長い間アメリカにいて、向こうの習慣に染まってしまったの?それとも男性慣れしていない私の反応を面白がっているだけ?

 どっちにしろ、毎日こんなふうじゃ、とてもじゃないけれど私の心臓が持たない。