「私も仲良くなりたいんだけどなぁ」
「ずっと一緒にいるんだから、そのうち懐くよ」
そうかなぁ、と私のことなんておかまいなしに拓海だけにじゃれるこはるを見て悲しくなる。
ひとしきり遊んでこはるを満足させると、拓海がキッチンに入って来た。
「今日はなににするの?」
「うーん、キャベツが安くてつい一玉買っちゃったから、回鍋肉でもしようかなあ」
冷蔵庫の中を覗いて、他の材料を確認する。豚肉は冷凍していたものがあるし、長ネギはまだ残りがあるからOK。お豆腐とわかめも買って来たし、お味噌汁も一緒に作ろうかな。
「回鍋肉ね、わかった。キャベツの他になに使うんだっけ」
「きゃあ!」
急に耳元で声がして驚いた。拓海が私の背中にかぶさるようにして、一緒に冷蔵庫の中を覗いていたのだ。
「飯は俺が作るから、夏美は先にシャワーでも浴びて来なよ」
そう言いつつ、拓海は両手で冷蔵庫を抑えていて、私は彼の腕に閉じ込められている。
「だ、大丈夫。私が作るから、ちょっと離れてくれない……?」
いくらなんでも、距離が近すぎる。鼓動が急に早くなり、体がカーッと熱くなる。たぶん耳まで真っ赤なはず。
恥ずかしくなって両手で顔を抑えると、耳元で拓海のくすくす笑いが聞こえた。


