「俺と結婚すれば、夏美だって、これ以上榊社長に結婚についてとやかく言われることもないだろう?」

「それは、そうね」

 おじさまの目的は、私が素晴らしい人と結婚して幸せになることだ。

 拓海はすでにおじさまに気に入られているようだし、彼が相手となれば、おじさまだって諸手を上げて賛成する違いない。


「それに夏美だって、お見合いを繰り返すのはもう嫌だろ? またあんな危ない目に遭わないとも限らないし」

 たしかに、おじさまの数打ちゃ当たる戦法につき合っていたら、また加藤さんみたいな人に当たらないとも限らない。あんな目には2度とあいたくない。


「拓海の言い分はわかったけど……。でも、どうして私なの?」

「大学からのつきあいですって言えば、周りも納得せざるを得ないと思うんだ。俺がアメリカに行っている間も遠距離恋愛をしていたことにして。それだけの長いつきあいを今さら解消させるわけにはいかないだろ」

 なるほど、学生時代からの恋を実らせ、しかも海外と日本での遠距離恋愛を越えてのゴールインとなれば、周囲も反対しにくいかもしれない。