急に右手の拘束が解かれて、反動で私はソファーに尻餅をついた。どこから現れたのか、長身のスーツ姿の男性が加藤さんの腕をひねり上げている。

「いっ、痛い痛い。なんなんだおまえは!」

「申し訳ありません、彼女が嫌がっているように見えたので。これ以上、乱暴なことはしないと約束しますか?」

 加藤さんの腕をしっかりと抑えつつ、男性が冷静な声で問いかける。

「しない、絶対にしないよ!」

 加藤さんの返事を確認して、男性はようやく手を離した。何事もなくてよかった。ホッと息を吐いた次の瞬間。

「くそっ、邪魔しやがって!」

 激昂した加藤さんが、男性の胸倉に掴みかかった。

「加藤さん、ダメです。暴力はやめてください!!」

 私は二人の間に体を滑りこませると、力いっぱい加藤さんを突き飛ばした。

「夏美さん……」

 怒りで肩を震わせる私を見てようやく我に返ったのか、加藤さんは両手を下ろすと落ち着きなく目を泳がせた。

「いや、これは、誤解です。こんなつもりは……」

 おろおろとする加藤さんの顔を、私はキッと睨みつけた。