お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~


「みんなしてわざわざ出迎えてくれたの」

「虹もこなつも、パパの帰りを待ち切れなさそうだったからね」

「そう。で夏美は?」

 ほんの少し意地悪な目をして拓海が訊く。

「それは、もちろん私だって……」

 恥ずかしくて小さな声で「待ってたよ」と言うと、拓海はくすりと笑った。

「嬉しいもんだね、自分の帰りを待っててくれる人がいるってことは」

 そう言うなり虹の目を片手で隠して、そっと私に顔を近づける。私が目を閉じると、すぐに柔らかな唇が降りてきた。

 しっとりと甘やかな、でも拓海の愛情が伝わるキス。それだけで、ドキドキと胸が高鳴ってしまう。ふたりともついキスに夢中になっていると、「にゃあー!」これ以上待たせるなとでも言いたげに、こなつが大きな鳴き声を上げた。

「ごめんごめん、今度はこなつの番だな」

 虹を私に預け、拓海がこなつを抱き上げる。ひとしきり撫でさすってあげると、こなつは気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしていた。