「虹、パパ帰って来た!」
虹を抱いたまま、家の外に出た。車を停め、拓海が降りてくる。一日働いてきたとは思えないほど、拓海はスーツをぱりっと着こなしていてとても格好いい。我が旦那さまながら、見惚れてしまう。
玄関先に立っている私と虹を見つけると、拓海は蕩けるような笑みを見せた。
「ただいま夏美、虹」
「おかえりなさい。早かったのね」
私が言うと、「みんなに早く会いたくて、早めに切り上げて帰って来たんだ」なんて言っている。
元々愛情深い人だとは思っていたけれど、虹が生まれてからの拓海は、照れることなく家族への愛を示してくれる。私も、虹もこなつも彼の愛情を一心に受けているから、みんな彼のことが大好きだ。
だから拓海が家にいると、すぐに彼の取り合いになってしまう。本当は私も参戦したいところだけれど、年長者としてぐっと我慢している。
虹が拓海に向かって手を伸ばしたので、彼の荷物を私が引き受けた。
拓海が私から虹を抱き上げて家の中に入ると、ずっと玄関の奥で待っていたこなつが「にゃあ~」と鳴き声を上げた。
「ただいまこなつ、ちょっとだけ待っててな」
拓海が声をかけると安心したのか、こなつはその場に寝そべって大人しく順番を待っている。
拓海が虹を軽く高い高いをすると、パパのことが大好きな虹は、きゃっきゃっと声を上げて喜んだ。


