すっかり気分も持ち直して、二人でお茶をしていると、突然来客を知らせるチャイムがなった。
「いいわ夏美さん、私が出るわ。……拓海!」
待ち切れなかったのか、玄関の鍵を開けて入って来たのは、仕事中のはずの拓海だった。
「拓海、どうして。仕事は?」
「大丈夫、ちゃんと任せてきた」
そう言ったかと思うと、佐奈さんがいるのも構わず、拓海が私を抱きしめた。
「体は大丈夫なのか? そうだ、病院。すぐに行こう。近くに産婦人科あったっけ?」
慌てふためく拓海を見て佐奈さんはため息をつくと、ぺしっと拓海の頭をはたいた。
「拓海ったら、ちょっと落ち着いて。まずは夏美さんから離れて。そんなにきつく抱きしめたら、また具合が悪くなっちゃうかもしれないでしょ!」
「あっ、ごめん」
佐奈さんに言われて、拓海はパッと体を離した。私の顔を見て、拓海の方が顔を青くしている。
「それに、いきなり病院へは行けません。今夏美さんにうちの病院を紹介したところなの。うちの産科に話は通しておくから、改めて受診の予約を入れて」
「わ、わかった」
「それから!」
佐奈さんは普段の可憐さなんてどこかに置いてきたような顔で拓海を見ると、びしっと人差し指で指差した。


